触覚時代

活字人間は視覚だけが過度に発達した人種であり、視覚というのは人間の五感の中で最も識別、分類のきく感覚です。単に赤と白とを識別し、大小を見分けるだけでなく、その人の服装によってその人の人格や境遇を識別する能力を持っています。識別し分類するとそこに知識体系ができます。人間や組織の色分けをするようになり、順序を作り上げるのです。文明社会というのは、こういった現実の発達した活字人間によって現在のレベルまで高められたものです。
五感を平等に使う人間、例えば原始人になると五つの感覚が混雑して働くために、そこに秩序とか順序とかいうものはできず、価値の多様仕という現象が起きてきます。価値が多様化することは絶対価値がなくなることであり、そこでは人は自分自身の価値基準に依存するほかなくなります。つまり触覚時代に価値が多多様化し、分裂するということはそこからくるのです。この触覚は医学者に言わせるとも最も原始的な感覚で、赤ん坊がまず持つものはこの触覚です。触覚は分類整理能力が視覚に比べて弱く、触覚人間は視覚人間に比べて分類整理能力が低下しているために、論理性がより少ないことも当然です。今日の時代に対応する方法は頭の中で計画したことを実行に移すのではなく、まず受け手に接して、そこで体でつかんだ反応を仕事なり製品に現わすという触覚的な生き方が必要となります。

時代と感覚

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